「夏みかん」という名前を聞くと、夏の果物と思われる方が多いかもしれません。実際には、冬から春にかけて収穫されるみかんの一種です。夏みかんは湘南エリアの温暖な気候に育まれ、控えめながらも季節を感じさせてくれる存在として親しまれています。

SAJIMA VILLAGEのキッチンの隣にも、見事に実をつける夏みかんの木があります。今年もその木が豊かな実りを迎え、早速収穫を行い、クラフトドリンクの仕込みが始まりました。夏みかんのさわやかな酸味と香りは、この時期ならではの特別な味わいです。そのまま食べるには少し酸味がありますが、ひとつずつ丁寧に時間をかけて仕上げることで、その魅力が一層引き立ちます。

冬に収穫が始まる夏みかん。その名前には、こんな由来があります。
時代は江戸中期。とある村人が庭先に芽吹いた木を見つけ、その不思議な果実に目を留めました。その木に実っていた果実は、寒い冬を越えても木の上でしっかりとその形を保ち、初夏を迎える頃まで傷まずに残っているのです。当時、柑橘類は冬に収穫されるのが一般的でした。そんな中、このみかんが初夏まで楽しめることに驚いた村人たちは、「夏のみかん」と呼び始めたといいます。

陽光を受けて、風に実を揺らす夏みかん。その姿は、当時の村の人々にとって新鮮でありながらも長い期間にわたってみかんを楽しめる喜びをもたらしました。その後、その苗木は全国へと広まり、湘南の穏やかな環境にも根付くこととなります。やがて夏みかんは、地域の暮らしの一部として自然に溶け込んでいきました。

SAJIMA VILLAGEでは、この夏みかんを大切に育て、訪れる皆さまに季節を感じる体験をご提供しています。決して目立つ存在ではありませんが、その土地に根付いた自然の恵みだからこそ、伝えられるものがあります。自然とともに過ごす時間の中で、ふと感じる豊かさ。夏みかんは、そんなひとときを支える存在として、ささやかな彩りを添えています。

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